気難しい売れっ子作家の契約妻になりました 〜私にだけは、心を開いているそうですが……?〜
最上階まで続くエレベーターは、到着に時間がかかる。私史上、最も長い時間エレベーターに乗っている。チン、と到着を合図する短い音と共にエレベーターを降りると、キョロキョロと部屋番号を確認しながら冬田さんの部屋を探した。
「あっ……ここだ」
部屋の前で止まると、インターフォンを鳴らす。すると、数秒ほどで少しだけ玄関が開く。隙間から見える部屋は暗い。けれど、ヌッと見えた顔にかけている眼鏡が怪しく光る。
「っ……」
思わず息を飲んでしまう。狭い隙間からスッと差し出されるのは分厚い茶色い角形封筒。中央にラベルが貼ってあり、それをハンディー端末で読み取り、郵便番号、住所、氏名を確認しながら入力していく。すると、目に入った文字にピタリと動きが止まった。
そこには、『涼田 冬太』と書いているのだ。しかも、差出人のところに。ということは――そう思って、視線をラベルから玄関ドアの隙間に向ける。
「あの。急いでもらえませんか」
「涼田 冬太って……あの!?」
冬田さんの言葉に返事するよりも先に、自分の疑問をぶつけてしまった。
だって、『涼田 冬太』先生って……大人気の売れっ子漫画家なんだもの……!