気難しい売れっ子作家の契約妻になりました 〜私にだけは、心を開いているそうですが……?〜
「……知ってるんですか」
隙間が少し大きくなる。怪しく光る眼鏡だけ見えていたが、冬田さんの姿が見えてきた。服装はだぼっとしたトレーナー。けれど、背がすらりと高くて、手足もすらりと長いから、ラフな格好なのに、不思議とだらしなく見えない。それに、あまり顔色は良くないけれど――とても綺麗な顔をしている。
(涼田先生って、綺麗な顔してるんだ……)
そんなことを瞬きしながら思っていた。
「はいっ! デビューの読切から読んでます! あの時から絵がすごく綺麗で、お話も面白くて……連載が決まった時、やっぱり! って思いました!」
涼田先生は、私の――心の支えだから。本人と会えることなんて、ないだろうと思っていたけれど、もし会えたら言いたいな。なんて思っていたことだから、つらつらと言葉が出てくる。
「……読切から?」
また、隙間が広くなる。
「はいっ……あっ」
こくりと頷いたが、すぐに我に戻る。そうだ、私――今、仕事中だった……!
それなのに、これほど気持ちを高めてしまったことを恥ずかしく思った。
しかも、ラベルで知った個人情報をもとに話しかけるなんて、ご法度だ。クレームになる可能性が高いから、気を付けるようにと言われていたのだ。