気難しい売れっ子作家の契約妻になりました 〜私にだけは、心を開いているそうですが……?〜

「デビューした頃から、そんな風に覚えてくれてる人」
「いえいえ。みなさん先生にお会いする機会がないだけで、覚えてますよ。あっ、原稿はしっかりとお預かりしますのでっ。それでは、失礼します」
「はい。また聞かせてください」

 そう言った先生の目は細くなっていた。
 このコースには、入ったことがなかった。けれど、冬田さんの話は聞いた事があった。『気難しくて、集荷に来る人を選ぶ人』と。しかし、少し話しただけだが、どうやら、その噂は私には当てはまらないらしい。
(先生……全然、怖い人じゃなかったな……漫画の話をしても、むしろ先生からしてくれたし……)
 そう思いながらその日は仕事を終えた。


 そして、翌日。秋山さんは、私が冬田さんの所の集荷に行ったことを知り、朝一で挨拶するより先に「大丈夫だった!?」と聞いてきた。

「はい。とても優しい方でした」
「優しい……!? 冬田さんが……!?」

 私の言葉を聞いた秋山さんの顔は、今も忘れられない。
 それ以来、水曜の三コースの集荷は私が担当になった。
< 8 / 12 >

この作品をシェア

pagetop