運命? いいえ、私が恋を狩る

第2話 私の恋人

◆

「結婚させられそう……!?」
 ランリンへ驚きの声をあげたのは、ウェイ・リーヨウ――彼女の恋人だ。彼は陽気な軍人で、いつもランリンを笑わせる存在だった。

 そんなリーヨウと街外れの竹林で会っていたランリンは、力なくうなずく。

 リーヨウはしばらく考え込んでいた。
(御史中丞《ぎょしちゅうじょう》のシェン家か……。いろいろと黒い噂を聞く)

 突然、リーヨウはランリンの両手を握って「じゃあ、駆け落ちしよう!」と言った。

 その言葉を聞いたランリンは、思わず笑ってしまった。ランリンを諦めないリーヨウの気持ちが、嬉しかったのだ。
 だが、ランリンは首を振った。
「それは最後の手にするわ」

「どうして?」

「だって、私たちなにも悪いことしてないのよ? 堂々と街のみんなに祝福されたい」

 ランリンの頭に、イェミンから振り回された過去が浮かぶ。
「――たしかに、父さんは見栄っぱりよ。いっぱい刺繍してある重い衣《ころも》を着せられて、何本もかんざしを挿されて、商談の席でお茶出しをさせられてたし……。箔づけのために、退屈な琴棋書画を習わせられたし……。しかも父さんったら、刺繍大会で私を入賞させるために、審査員にお金を積んでたのよ。私が怒ると、『何が悪い!』って開き直られたし……!」

 プリプリ怒っていたランリンだったが、不意に少しだけ声を落とした。
「でも……いいところもあるのよ。女性向けの雑貨店の仕入れを、私に任せてくれるの。私の目利きを信用してくれてる。だから、縁切りしたくないわ」

「わかった。――それで、君はどうする?」

「玉擲《ぎょくてき》の儀をするわ。儀式まで8日しかないから、特訓につきあって」

「おう」

「……でも、あなた毎日来られるの?」

「大丈夫。フーリェンたちに勤務を代わってもらうから」

「そんなにしてくれるの?」

「代わりに、君の店の商品を安くしてもらえないかな? あいつら、気に入った娘に贈りたいって言ってたから」

「もちろん」

「だけど……君は投壺《とうこ》※がへたくそだからなあ。短時間で仕上がるかどうか……」 [※離れた所にある壺に向かって、矢や棒を投げ入れる遊び]

 神妙な顔で言ったリーヨウの頬を、ランリンがつねった。だが、彼はへらへらと、どこか嬉しそうだった。
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