運命? いいえ、私が恋を狩る
◆

 早速、ランリンの特訓が始まった。

 廃寺近くのさびれた楼閣に、ランリンはリーヨウと共にいた。楼下の地面には、竹製の背負いカゴが置いてある。

 楼上でリーヨウは、繍球と同じ大きさの球を持つランリンの手をとった。
「ランリン、いくぞ? せーの……」

 リーヨウの合図と同時に、ランリンは球を投げた。

 ポトリ。
 球は吸い込まれるように、地面に置いたカゴの中へ入った。

「こんな感じだ」

「……ええ」


 それから、毎日ランリンは球を投げた。
 1日目は外れてばかりだった。2日目には、カゴの近くまで届くようになった。


 特訓の合間に、ランリンとリーヨウは敷物の上に横たわっていた。

 ランリンは、リーヨウの広い胸板へ顔をうずめて思いきり香りを吸い込む。ほんのりと、汗と草の匂いがランリンの鼻をくすぐった。
 思わず、ランリンから「はあ……」とため息がこぼれる。

「焦るなよ。疲れてるだけだ」

「わかってるけど……」

 リーヨウの大きな手が、そっとランリンの背中をなでる。やがて、ランリンは落ち着いていった。

「――あなたじゃなきゃ嫌なの、私は」

「俺も君じゃなきゃ嫌だ」
 リーヨウの声が低くなる。
「君を誰かに奪われるって思った瞬間――戦場で囲まれたときより、ずっと怖かった」

 ランリンは、少しだけ顔を上げた。
「ねえ、私のどこが好きなの……?」

「初めて会ったときの君は、泥棒を追いかけて捕まえて……そのあと馬乗りになって殴ってただろう?」

 ランリンは、目を丸くした。
「……そんなところ?」

「そういう、全身で生きてるところがいい」

「私をたしなめなかった人は、あなたが初めてよ……」

 ランリンは、リーヨウの上腕を衣越しにそっとつついた。そこは硬く張っていて、ランリンの指先はほんの少し沈んだあと、押し返される。ランリンは、小さく笑った。

(……かじったら、どんな味がするのかしら……?)
「ぜんぶ食べちゃいたい……」

 ため息まじりにランリンがつぶやくと、リーヨウの腕が少しだけ強くなった。それから「俺はきっと美味しいよ」とはにかんだ。
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