運命? いいえ、私が恋を狩る
◆

 スー家の居間で、ランリンがイェミンをにらんでいた。
「リーヨウをどうしたの……? 父さん、何か知ってるんでしょう?」

「お前に妙な虫を付けるわけにはいかん」

「虫じゃないわ! リーヨウは、私の夫になるのよ!」

 イェミンが、怒りに目を見開いて「ランリンを部屋へ閉じ込めておけ!」と怒鳴った。

 ランリンは侍女たちに無理やり抱えられて、自室へと押し込められた。自室の扉に、鍵がかけられる。

「ひどい! 私の幸せをどうして邪魔するの!」

 扉を挟んだ廊下で、イェミンが反論した。
「何が幸せだ! あんな貧乏人に嫁いだら、苦労するに決まってる! 金が無いということがどういうことか、お前は何もわかっていない! お前の幸せは、シェン家に嫁ぐことだ!」

「そんなきれいごと言ってるけど、父さんは貴族とつながりたいだけ!」
 イェミンは、息をのんだ。彼はランリンの幸せを願っているが、彼女の言うことも図星だったからだ。

 オロオロと、ランリンの母が「あなた、ここまでしなくても……」とたしなめる。

「ランリンは、どうしてああなんだ……! 昔から親に歯向かってばかりだ。まったく……」
 イェミンはイラ立ったまま去っていった。


 ランリンは部屋をウロウロしながら、腹を立てていた。
(やっぱり、父さんがリーヨウをどこかにやったのね……! 本当に駆け落ちしてやろうかしら!)

 だが、ふと真顔になった。
(でも……リーヨウは、あれでも禁軍だわ。彼を拉致したら、陛下への反逆行為も同然。――父さんは、そこまで愚かじゃない。ということは……悪事を揉み消せる黒幕がやったはず)

 不意に、ひとつの考えが浮かんだ。
(――シェン家)

 ランリンはそれから、寝台から外した帳《とばり》を細く裂いて結び合わせ、長い紐にした。それを柱にしっかり結びつけた。
 みんなが寝静まった真夜中に、ランリンは紐を窓の下へ垂らした。それを使って、そっと階下へ降りた。
(リーヨウに教わった技が役に立ったわ……)
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