愛なんて要らないはずでした~逃げるために嫁いだのに、心まで奪われています~
 彼女の反応にほっと息を吐き、私はやっと席に着いた。

 だが、事件は席順だけではなかったのだ。

「あぁ、キーラ。可愛いキーラ。今日もこの淡い金の髪がなんて美しいんだ……」
「え、ええっと」
「リアナに似なかった赤い目だけはダメだが、それでも目を伏せると本当にリアナそっくりだ……」

 自身の食事には手をつけず、出された食事を切り分けるために視線を落としただけで恍惚にも取れる声色で父からそんな言葉が発せられる。

(目の前に新しい母親がいるのに!)
 それなのに、父の口から出るのは私と亡くなった実母の名前だけ。
 うっとりとした眼差しを向けながら、私の髪へと手を伸ばしては指通りを楽しむように触れてくるのだ。

 この異様な状況にじわりと額に汗が滲む。
 先ほどまではにこやかで温かな笑顔を向けてくれていた継母と義妹は、そんな私たちに愕然とした様子で言葉は一言も発しなかった。

「あぁ、リアナ。私のも全て食べて構わないんだよ。君は妖精のように美しいが、出会ったころは活発に走り回っていたじゃないか」
「お、お父様、私はキーラですよ。活発に走り回っていたのは幼い頃ではありませんか?」
< 12 / 20 >

この作品をシェア

pagetop