愛なんて要らないはずでした~逃げるために嫁いだのに、心まで奪われています~
 戸惑いを滲ませる継母に、私は苦笑するしかない。だが、その笑みと家の歪みを目の当たりにしていた彼女は全てを察したのだろう。

「それは私の全財産です。父から学んだ力で独自に作った商団で個人として稼いだものですので、そこから足が付くこともありません。遠くに土地も買いました。王都からは離れてしまいますが、海も近く、気候もいいので気に入っていただけると嬉しいです」
「そ、それなら貴女がそこへ行けばいいんじゃ──」
 戸惑いながら告げられた言葉に、私はゆっくりと首を左右に振る。

「いいえ、土地の売買は履歴が残ってしまいます。私……いえ、母に執着している父ならば、きっと見つけて追ってくるでしょう」
「……」
 私のその推察に納得したのか、継母は口を噤んだ。

「その場所に行ったのがおふたりならば、そこまでは追ってこないはずです。父には辺境伯家へ嫁ぐ旨の手紙を残してきたので、私の居場所もわかっているはずですから、そちらへ押しかける理由もありませんし」

 そして、戦闘能力の低い一貴族が死の森へと足を踏み入れるのは自殺行為だ。父であれど、私の居場所がわかっていても簡単には追ってはこられない。
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