愛なんて要らないはずでした~逃げるために嫁いだのに、心まで奪われています~
第一章 死神と呼ばれる辺境伯

1.幸せは簡単に壊れてしまう

 子爵家でありながら、ロイス家はオルステッドでも特に名高い貴族のひとつだった。それは商団をいくつも持っているおかげでかなり裕福な家だから、ということももちろん理由のひとつだったが、貴族の家では珍しい恋愛結婚をした家だからでもあった。

 子爵夫人は、元は子爵が商談の帰りに寄った酒屋で出会った平民の店員だった。
 当時十六歳だった彼女に一目惚れした子爵が何度も通い、そして結婚したのである。子爵の溺愛ぶりは有名だったが、それと同じくらい貴族として磨かれた子爵夫人の美貌も飛びぬけており、その様は妖精のようだと揶揄されるほど。
 はじめて子爵のパートナーとして子爵夫人が現れた夜会では、男女問わずすべての人が彼女にくぎ付けになったのだ。

 そんなふたりには母譲りの美貌を持った一人娘がいた。
 その娘こそ、キーラ・ロイス。私である。
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