愛なんて要らないはずでした~逃げるために嫁いだのに、心まで奪われています~
 違和感はそれだけではなかった。
 膝がダメならばと私の隣に座りたがる父が、私の手に自身の手を重ねるのだ。そして指の長さを確かめるように艶めかしく一本一本に触れていく。
 だが、拒否はできない。やっと部屋から出てきた実父だ、スキンシップは激しいが、そういうものなのだと必死に自分に言い聞かせていた。怖かった。だが、信じたくもなかった。これは普通のことなのだと、どこの家でも溺愛されている娘ならば過剰になることもあるのだと思い込もうとした。
 母の代わりをしなければという気持ちも多少はあった。もちろんそれは娘として支えるという意味だった。

 そんな日々が二年ほど続き、十八歳になった時、決定的な事件が起きた。その晩は母の命日で、なかなか眠れず月を眺めながら水を取りに行こうと廊下を歩いていた私は、同じく廊下に出ていた父と遭遇したのだ。
 そして父は確かに私を「キーラ」と呼び、優しく頬を撫で、「おかえり」と口にした。

 意味がわからなかった。私はどこにも出かけてなどいなかった。母と混同しているのかと一瞬思ったが、呼ばれた名前は確かに私のものだった。
 
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