今夜も執事は、お嬢様を手放さない
その背を見送りながら、ことははきょとんとした。

「碧、お迎えってまだだよね?」

「ええ。ですが、お嬢様がお困りではないかと思いまして」

「困ってなかったよ?」

「そうですか」

 碧の笑みが、少しだけ深くなる。

「では、私の勘違いということで」

「うん……?」

 友人たちはどこか気まずそうに笑っていたが、ことはには何が起きたのかいまいちわからなかった。

 碧はそんなことはに向き直る。

「ハンカチ、落とされませんようお気をつけください」

「うん、ありがと」

「それでは放課後に」

 恭しく一礼して去っていく背中を見送りながら、友人の一人がぽつりと言った。

「東雲さん、なんかこわくなかった……?」

「え? そうかな?」

「やさしい顔してたけど、圧すごかったよ……」

「そう……?」

 ことはには、やっぱりよくわからなかった。

 放課後。約束通り、ことはは図書室へ向かった。

 静かな空間に並ぶ本の背表紙を眺めながら、新しく入った小説を手に取る。ページをめくるたびにわくわくして、時間が経つのがあっという間だった。
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