きみと、どうかしてる。
「分かった。俺が悪かったから」
「……ほんとに悪いと思ってる?」
「思ってる思ってる」
これ以上面倒臭さが悪化しないように下手に出ると、
「あたしを早く帰して、一緒にいた人のところに戻るの?」
「は?」
「だから早く帰したいの?」
「………」
予想外の返しに、面食らった。
何も言わずに黙ったまま、亜美子の顔を見つめていると、すぐにパッと明るく笑って。
「メンヘラ風味の亜美子ちゃんにビックリした?
子ども扱いするから仕返しだもーん!」
「…あぁ、」
「"あぁ”ってなにさ。否定しなよ!
それとも、別の女と約束ですか?」
「………」
「さっすが、毎日違う女をたぶらかしてるだけありますねぇ!」
……あー、ビックリした。
亜美子もあの女みたいにヒステリック発動すんのかと思った。
そういうやつじゃないのは、よく分かってるはずなのに。
「毎日じゃない。次余計なこと言ったら放って帰る」
「わーん!なんだよぉ、千尋だって、あたしが嫌がること平気でするくせに!」
「俺はお前のため。これ以上続けるなら帰る」
「ふぅーん。
じゃあ、話変えるんだけど」
「ん」
「千尋から甘い匂いが、ずーーーっと消えないんだけど。これ香水?何時間一緒にいたらこうなるの?」
「いや、話変えろよ」
「ちゃんと変えたでしょ!
ねぇねぇ、今日はどんな人だったの?美人?巨乳?美尻?」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、片方の腕を巻きつけてくる亜美子には、
さすがにちょっと調子乗りすぎだし、"お子さまには縁のない話"って、そう言うと。面白いくらい不機嫌な表情に変わる。
「だーかーらぁ!子ども扱いしないでって!」
「それは亜美子の態度次第」
「え?態度?」
「まだ帰らないっていうなら、分かるよな?」
「………」
「………」
「……わかったよ。もー、仕方ないな!
オーナー、亜美子さん帰りまーす」
立ち上がった姿を見たところで、ようやく勝利を確信する。不機嫌オーラ全開だけど。
………はぁ、やっとか。
安堵のため息をついてから、足早に出口へと向かって行く亜美子の後をゆっくり追った。