きみと、どうかしてる。
「うそ!二人だけなのに後ろの席!?
何ゆえですか!?」
「話を聞かなかった罰。そこで大人しく反省してろ」
「えー!!つまんない!!」
結局、車にたどり着くまでの道中、ずっと喋り続けていた亜美子を後部座席に放り込んでから。
すぐ運転席に乗り込んで、後ろの窓を全開にする。
「ぎゃー!さむっ!!」
「ほら、水」
「水!?寒いって言ってるのに水!?
おっ、鬼だぁ!千尋が鬼化したぁ!!」
ぎゃあぎゃあと文句を言いながらも、素直に受け取るところを見ると。やっぱり喉は渇いてたらしい。
ちゃんと飲んでるし、本当に風邪引かれたら困るし。仕方ないから窓は閉めてやるか。
「………」
「………」
車を発進させた後も、ずっとペットボトルに口をつけているせいで、さっきとは打って変わって静かな車内。
それはそれで調子が狂うんだけど、って思ってしまう俺はワガママなんだろうか。
二人とも無言のまま、しばらくして。
エンジン音が支配する空間に、小さな声が響く。
「まだ帰りたくないなぁ……」
「………」
「って言ったところで、このまま帰されちゃうんだろうなー」
「………」
「やだなー、寂しいなー」
「………」
「もっと一緒にいたいなー…」
「………」
何考えてんのか、気になってはいたけど。
……出来れば、口には出さないで欲しかった。
走り始めたばかりだというのに、もう別れを惜しんでいる亜美子は、一体どんな顔で言ってんのかと。バックミラーを確認すると。
「………」
「………」
寂しいと悲しいを、顔に貼り付けたような。
悲壮感溢れる表情で、窓の外を見つめていた。
……いや、それは。反則だろ。
色んな表情を見せてくれるのは楽しいけど、でもそれは、喜怒哀楽でいうと喜と楽に限った話で。
今にも涙が零れ落ちそうな弱々しい様は、見ているだけで否応なしに罪悪感を抱かされる。