きみと、どうかしてる。
家について車を停めても、降りる気配はなく。
さっきと何も変わらない姿に、なんて声をかければいいのか。
なんとなく。なんとなくだけど。
……今日は、いつもと違う感じがする。
出来ることならこのまま、何か言い出すまでそっとしておいてやりたいけど。
そういうわけにもいかないから、一呼吸おいてから、隣へ移動する。
「嫌なことでもあった?」
不躾に尋ねた俺を一瞥して、すぐに視線を窓の外に戻す。
「ううん、何もないよ。
学校行って家帰ってイチ行って、いつも通りだった。
……いつも通り、なんだけどね。ほとんどは」
「ほとんど?」
「んー…」
「………」
「………」
それ以上話す気はないらしく、無言のまま肩にもたれかかってくる。
「ねぇ、」
「ん」
「今日、泊まっていかない?」
「……は?」
「だめ?」
「………」
「何が何でも絶対やだ?」
「いや、感情の問題じゃなくて、」
「着替えは貸せないけど、お風呂は貸せるよ?」
「だから、」
「お腹空いたらご飯も作るし、枕が変わると寝れないタイプだって言うなら取りに帰ってもいいし、」
「………」
「大サービスで、子守歌も歌っちゃう!」
考えることに飽きたのか、はたまた、自分の中で結論が出たのか。
突然、底抜けに明るい表情で見つめてくるこいつは、自分が言ったことの重大さを理解してないんだろうな。
「はぁ。バカ言ってないで早く降りろ」
「えーー!やだやだやだやだ!!!」
もっともな返しをしただけなのに、駄々をこねる亜美子は。
これが拒絶や意地悪じゃなく、優しさだってことにも、きっと気付いてないんだろうな。