きみと、どうかしてる。
「つまり、いつもより時間遅いけどそれは関係ないってことだな?」
『ないよ!え、あたしの話聞いてた?ちょっと会わない間に理解力死んだ?』
「……"ちょっと"前に会ったと思ってんなら、確認しなくてもいいだろ」
『…? あ、違う違う、今のは言葉の綾!単なるミスです!最強無敵の天才優等生だってねぇ、間違う時あります!』
「知り合いに優等生いないから。間違い電話なら切るわ」
『ほんとだもん!千尋に見せてるのは仮のあたしであって、普段は優等生なんだよ。知らなかった?』
「………」
『気になる?気になるよね?お話ししたいよねえ?会いたくなっちゃったねえ???』
いつもの調子でテキトーなことばかり言って、楽しそうに笑うから。
話に乗らないつもりだったのに、相変わらず面白くて。つられて口の端から笑いが漏れる。
どう返したものかと考えていると、急に腕が重くなって。
「ねぇ、」
「………」
「電話、まだ終われない?」
「………」
沈黙していた隣の女がとうとうしびれを切らしたようで、眉間には深いシワが刻まれていた。
『あ、やっぱり一人じゃない!』
「………」
「………」
『ま、金曜日だしね。モテモテキングの千尋様が一人でいるわけないよねぇ』
「………」
「………」
……あー、どうするかな。
今来たばっかだし、全然どっちでもいい。
どっちでもいい、はずだけど。
苛立ちを隠す気がない隣の女の表情を、"鬱陶しい"と感じていて、
『ずるいなぁ、あたしだって話したいこといっぱいあるのに…』
電話越しに聞こえたしょぼくれた声に、別れを切り出せないってことは。
……この女と一緒にいることを選んだ、数十分前の自分が憎い。