きみと、どうかしてる。
「二人きりで。」
玄関ドアの覗き穴から、車が発進したことを確認してすぐ、崩れ落ちるようにずるずるとその場にしゃがみ込む。
「びっっっっっっくりしたぁ………」
激しく鳴り続ける心音を落ち着かせようと、自分で自分を抱きしめた。
あたしと千尋は、恋人でも友達でもない。
ならどんな関係?と聞かれても、あたし達の関係を表すのに適当な言葉が見当たらない。それくらい曖昧な関係。
会ったところで得るものはないし、こんな面倒な子の相手は、普通なら絶対しないと思う。
あたしなら、あたしみたいな子には関わりたくないとすら思うけど。
……千尋は、こんなあたしのこと。
どう思っているんだろう。
呼んだら来てくれて、呆れるほどくだらない話も、ふざけたワガママも、なんでも聞いてくれて。
お姫様抱っこはさすがに無理だろうと思ってたのに、それもしてくれた。
ただ構ってくれるだけじゃなくて、特別扱いしてくれる。その理由が全然分からない。
あたしなんかに会ったところで、迷惑をかけられるだけっていうか、時間を無駄にするだけだってことは、千尋も分かってるはずなのに。
……どうして、優しくしてくれるんだろう。
いくら考えても分からないその理由を、知りたいけど。
でも、これだけは絶対に聞かないって決めてる。
高校生が居酒屋で、しかも一人で飲んでるってことを知ってしまった以上、性格的に放っておけない、とか。
何をしでかすか心配だから見捨てることができない、とか。
それらしい理由はいくらでも想像できるから。そういうことにしておく。
だって、嫌だもん。
底抜けに優しくて、こんなどうしようもないあたしに構ってくれる、希少な人を。
……大好きな、千尋のことを。
失いたくないから。
余計なことまで知ろうとして嫌われるくらいなら、会えなくなるくらいなら。
理由なんて、一生知らないままでいい。