きみと、どうかしてる。
「私、MINORIが好きなんだけど知ってる?
最近は洗顔のCMソングしてるんだよ。
"あなたが好きな~あたしになるために~"ってやつ」
「それは聞いたことあるかも!」
「じゃあ、MINORIにしようかなー」
手早く曲を検索すると、テレビに向かって機械を突き出す。
すると、画面が切り替わって音楽が流れ始めた。
「えーっと…あたしはどうしてたらいい?黙って聞いてればいいの?」
「? 知ってるとこだけでも一緒に歌う?」
「ううん、歌ってくれてる間はどうしてるのが正解なのかなって」
「谷村さんそれって…
あ、曲始まっちゃった」
他人が歌っているところを生で見るなんて、音楽の授業くらいしかないから。すごく新鮮に感じる。
立って歌うのかと思ってたけど、座ったまま歌うもんなんだ、とか。新しく知ることが多くて面白い。
拍手でもしようと両手を上げたけど、歌い終わってすぐあたしの方に向き直る森下さんに驚いて、手を止めてしまった。
「もしかして来た事ないの?」
「え?」
「カラオケ以外は?ゲーセンとかプリクラとかボウリングとか。経験ある?」
「………」
「無言ってことはつまり、ないってこと?」
「……ま、まぁ…」
「えぇ!?それはダメだね!」
「ダメなの!?」
質問を投げかけたり、リクエストに答えて歌ってくれたり、ノートを取ったり。
せわしなく動き回る森下さんがすごく可愛く思えてきて、最悪な状況下なのに、少しだけ笑みが零れた。