きみと、どうかしてる。
開始早々戦闘不能になった森下さんに、これ以上攻撃を受けさせるわけにはいかない。
だから、恥ずかしいほど密着している体を無理やり離して。
「千尋、分かったから!」
「いや、何も分かってないっつーか、聞く度に理解できなくなってんだけど」
「そっちの分かったじゃなくて。
知りたいなら自分で答えるから、森下さんにはもう何も聞かないであげて」
「……あれ。なんで俺が悪者みたいになってんの?」
「悪者ですよ!誘導尋問だー!」
半泣きの森下さんが顔を上げて叫んだのと同時に、注文していた料理が席に届いた。
「もう夏川さんと話したくないです。トラウマになりそうです。年上こわい…」
……あれ?このタイミングは、もしや。
やっと話題が変わったから、便乗して元の話に戻らないようにしよう、なんて。
思ってないよ?ほんとほんと。
「ほら、千尋も食べよ?亜美子さんが好きなもの取ってあげるよ?」
「聞き出すなら聞かれる覚悟もしとけよ」
「わー、ここで正論とか。マジで容赦ないこの大人…」
「教えてやってんだよ、大人だから」
「私決めました。あなたを倒してみせます!」
「あっ、森下さん!ピザから目を離さないで。
たれてる!たれてるから!」
「え、わぁっ!熱っ!」
「はぁ。ピザたらした女に宣戦布告されたんだけど。これもう勝ち確じゃね?」
「暢気なこと言ってる場合じゃないから!明日も学校なのに、制服がピザまみれに!」
「近くにコインランドリーあった」
「そういう問題じゃなくてさぁ!!」
ピザ事件が一段落して、ほっと一息ついた時。
「で?」って。
隣に座っているあたしの方に、わざわざ体を向ける千尋に。
……さすがにこれくらいのことじゃ、忘れてくれなかったか。
ここまできて、やっぱり言いません!とは。言えないよね…
「亜美子、」
「はぁい…」
「いじめられてんのはこいつに?他のやつ?」
「いじめられてないの!
それにその、本当は、隠してることも。べつに隠すほど大した話じゃなくて、」
「………」
「……あたしの家、母子家庭で。
お母さんは仕事で基本的に海外にいて、たまーに帰ってくるくらいなんだけど、」
あーあ、嫌だなぁ。
言いたくない。知られたくない。帰りたい。
……嫌われるの、怖いなぁ。