きみと、どうかしてる。

ここまでずっと黙っていた二人だけど、先に反応を示してくれたのは。

「谷村さん…いや、亜美子ちゃん。
やっぱり、私と友達になろう!」

その場で立ち上がって、右手を差し出してきたのは森下さん。

「え?あたしの話聞いてた?」 

「聞いてたよ。書き留める必要ないくらい脳に刻み込んだ!」

「………」

「そんな言いつけ、人権侵害だよ!」

「でも別に、」
「そうだよね、今更いらなくない?って思ってるよね。でもそれって洗脳じゃない?」

「洗脳ってそんな、大袈裟な…」

「大袈裟じゃないよ。だって今のままじゃ、亜美子ちゃんの人生が台無しになる」

「………」

「私といたこの一ヶ月どうだった?鬱陶しいだけだった?できるならもう顔も見たくない?」

「………」

「お喋りして、カラオケ行って…
全く楽しくなかった?帰りたくて仕方なかった??」

「いや、その……」

友達なんていらないって思いは、今も変わってないけど。

……その質問には、とてもじゃないけどノーとは言えない。


「全部嫌だったって言うなら引き下がる。もう付きまとわない。

でもそうじゃないなら、絶対後悔させないって約束するから。友達になろう!」

千尋と話していた時とは別の涙を流しながら、あたしなんかのために、こんなに真剣になってくれて。

異常だってことが分かってもなお、優しい言葉をかけてくれる森下さんの手を。

「わ、わかった…」

握らない選択肢は、選べなかった。

< 51 / 69 >

この作品をシェア

pagetop