きみと、どうかしてる。
「あたしは会いたくないけど、千尋はあたしに会いたいみたいだから!仕方ないからまた誘ってあげるね!」
「あれ。もう帰んの?」
「ん?もうって?」
どうして、"もう"なんて言葉を使われたのか、言われた瞬間は理解できなかったけど。すぐに気付いてハッとする。
そういえば、自分から帰るって言ったのいつぶりだろう?知り合ってすぐの頃だけだから、記憶にはもう残ってない。
「早く帰って今日のことを忘れさせる儀式を執り行わないといけないから。この辺で勘弁しといてあげる!」
「なにそれ。怖いんだけど」
「送ってくれてありがと。じゃーね!」
窓から手を入れて、千尋の頬を少しつねってから。家に向かって歩き出す。
怒ってるとか恨んでるとかじゃなくて。
最後にちょっと、触りたかっただけ。
「亜美子、」
呼び掛けに応えるように振り返ると、変わらず窓を開けたままの千尋と目が合った。
「なに!」
「おやすみ」
「…おーやーすーみ!」
……急にそんな、優しいトーンで言わないでよ。
気持ちの切り替えがうまく出来なかったせいで、つい可愛くない言い方をしてしまう。
そんなお子さま丸出しのあたしと違って、千尋は。
嫌な顔ひとつせず、笑っていた。