きみと、どうかしてる。
「この女誰よ!」
………おかしい。
あんなの、絶対おかしいって。
椅子に深く腰掛けて、昼飯に一切手をつけることなく、ただ目の前をボーッと眺める。
親が激ヤバなだけで、友達いないくらい大したことじゃないし、"亜美子自身の話"としては、必死に隠すわりには肩すかしだった。冷静になった今もそう感じてる。
……そう感じてるのに、なんで。
抱きしめたのはまぁ、亜美子が思い詰めてそうな顔してたから。なんとなくそうしただけで。
問題は、"可愛い"なんて、ガラにもない感情を、無意識に口走ってしまったこと。
あんなこと言うの、何年ぶり?
……いや、違うな。
考えた上で言ったことはあっても、昨日みたく、脳が感情を認識するより前に口走ったのは、人生初かも。
それに、
「あーーー!!!!
やっと見つけた!てめえ電話出ろ!!!!!」
突然響き渡った怒号は、めちゃくちゃ聞き慣れた声で。反射的に声の主を探してしまう。
……しまった。
探すんじゃなくて、逃げるべきだった。
「めっちゃ探したんだけど!校内走りまわったんだけど!!」
「………」
「呑気に飯食ってんじゃねえよお前!ご貴族様ですか!?」
「……浩介、」
「あ?」
「俺も、スマホは見とくべきだって反省した」
「そーだろ!お前、」
「今一番見たくなかった、お前の顔」
やっと一人になれたのに。
邪魔すんなよ、めんどくさ。
ガタン!と大きな音を立てて、雑に椅子を引いて隣に座る浩介は。
「あー…」
「………」
「………」
本気で機嫌が悪いことを察しても、立ち去る気はないらしい。