婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!
「ハハハ。真白はかわいいし、無防備だから心配なんだよ」
「京志郎がいるほうが心配だわ!」
「元気そうで本当によかった」
「今のでどうしてその感想になるのよ!」
私が倉庫中に響きそうな声で叫んでいるのに、京志郎は怒鳴られたことなどまるで気にしていない。むしろ私が以前と変わらず元気に噛みついてくることに安心したように笑っている。
「本当に心配してたんだ。一応、SPには見守ってもらっていたけどね」
「……ん?」
「アパートってさ、危ないだろう。二階の部屋なんて、いつ誰が入ってくるかわからないからね。せめて三十階以上にしてくれればいいのに」
「SPってなに……っていうか、なんで住んでるところまで知ってるのよ……」
「知ってるに決まってるだろ。真白のことなら何でも知ってる。もちろん契約から派遣の登録から……そっと静かに見守ってきたよ」
私は胸ぐらを掴んでいた手を思わず離し、一歩、二歩と後ずさった。
京志郎はそんな私を追いかけるでもなく、ただ愛おしいものを見るような穏やかな顔でこちらを見つめている。
「何でもが何でも過ぎて怖いわ!」
「大丈夫だよ。生活には一切手を出してないから」
「SPつけてる時点で一切じゃないの!」
「でも真白、気づかなかっただろ?」
「それが一番怖いのよ!」
そうだ。これが高槻京志郎という男なのだ。
昔から私に対する愛情だけが常識の枠から盛大にはみ出していて、本人にはそれを隠す気も改める気もまるでない。
私の中ではもはや京志郎の〝京〟は〝狂〟と書くほうが正しいと思っている。
狂・志・郎、ぴったりだ。