婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!
***
その夜、私は仕事を終えると、友人と待ち合わせをしていた駅前のカフェへ向かった。
友人というのは松村優菜といって、大学時代からの付き合いだ。
東京の大学を出て、卒業後はこちらの地元で就職した彼女には、今回の逃亡計画でも部屋探しから仕事の相談まで何かと力を貸してもらっていた。
私にとっては、事情をすべて知っている、数少ない頼れる協力者でもある。
「楽しいかくれんぼはもうおしまいなの?」
「別にかくれんぼしてたつもりはないけど。本気で逃げてる。っていうか、優菜、京志郎となにか連絡とったりしてないよね」
「先月、偶然会ったくらい」
「ぐ、偶然? こっちで?」
「そう。だから驚いてさ」
「どうして教えてくれなかったの!」
「ヒミツだからって限定推しグッズくれてさ~。これ、ホントどこでも手に入らないやつなの。ごめんね?」
悪びれる様子もなくそう言った優菜は、バッグにつけていた黄色い髪の小さな人形を持ち上げると、その頭を指先でぺこりと下げて謝罪させた。
優菜が長年推し続けている二・五次元アイドル、通称まーくんの限定マスコットだ。
私は彼女の満足そうな顔を見ながら、頼もしい協力者というものは推しの前では意外に簡単に寝返るのだと知った。
その夜、私は仕事を終えると、友人と待ち合わせをしていた駅前のカフェへ向かった。
友人というのは松村優菜といって、大学時代からの付き合いだ。
東京の大学を出て、卒業後はこちらの地元で就職した彼女には、今回の逃亡計画でも部屋探しから仕事の相談まで何かと力を貸してもらっていた。
私にとっては、事情をすべて知っている、数少ない頼れる協力者でもある。
「楽しいかくれんぼはもうおしまいなの?」
「別にかくれんぼしてたつもりはないけど。本気で逃げてる。っていうか、優菜、京志郎となにか連絡とったりしてないよね」
「先月、偶然会ったくらい」
「ぐ、偶然? こっちで?」
「そう。だから驚いてさ」
「どうして教えてくれなかったの!」
「ヒミツだからって限定推しグッズくれてさ~。これ、ホントどこでも手に入らないやつなの。ごめんね?」
悪びれる様子もなくそう言った優菜は、バッグにつけていた黄色い髪の小さな人形を持ち上げると、その頭を指先でぺこりと下げて謝罪させた。
優菜が長年推し続けている二・五次元アイドル、通称まーくんの限定マスコットだ。
私は彼女の満足そうな顔を見ながら、頼もしい協力者というものは推しの前では意外に簡単に寝返るのだと知った。