婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!
「そうだ、小宮山さんは東京からだっけ? 実家は東京なの?」
「まぁ……そんな感じです」
「どうしてわざわざこっちに?」
「一人暮らしがしてみたかったんです」
「一人暮らしなんだ」
仁科さんは少し意外そうにしたあと、どこか嬉しそうに微笑んだので、それのなにがそんなに嬉しいのだろうと首を傾げる。
すると、空になりかけていた私のグラスに気づいたらしく、お酒を勧めてくる。
「次もビール?」
「あ、私はもう――」
そこまで言ったとき、何気なく向けた視線の先に京志郎の姿が入った。
歓迎会の主役なのだから当然といえば当然なのだけれど、京志郎の周りにはいつの間にか何人もの女性社員が集まっている。
次から次へと楽しそうに話しかけられているうえ、そのうちのひとりなど、わざわざ隣の席まで移動したらしく肩が触れそうなほど近い。
――なに女性に囲まれてるんだ、あの野郎。
思わずそう思ったものの、よく考えれば京志郎が誰と話そうが私には関係ない。
むしろ女性に囲まれているのなら、そのぶんこちらへ来る可能性が低くなるのだから歓迎すべき状況だ。
「小宮山さん? どうしたの? すごい顔してるけど」
「いや、飲みたい気分になったので、お代わりします」
「いい飲みっぷりだね」
「今日は飲みます」
「お、いいね。じゃあ付き合おうかな」
仁科さんが笑いながら店員を呼んでくれたので、私は運ばれてきた二杯目のビールを受け取り、もう一度だけ京志郎のほうへ視線を向けた。