婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!
なんなのよ……。
せっかく仁科さんと話せて、もしかしたらこれが私の人生初の恋愛につながるかもしれなかったのに……。
結局またこうして京志郎に邪魔されている。
それに。私はいまだ掴まれたままの自分の腕を見下ろした。
ところで、なんで今日は振りほどけないの?
「京志郎、離して」
「……」
「ちょっと。聞いてる?」
「聞いてるよ」
そう言いながらも京志郎はすぐには手を離さず、窓の外を流れていく街の明かりを眺めていた。
いつもなら放っておいてもうるさいくらい話しかけてくるくせに、妙に静かなことが今度は気になってくる。
「真白はああいうのがいいの?」
「え?」
「仁科大輔、総務部二十八歳。東京文化大学卒業。営業部に五年いて、今年の一月に総務部へ異動」
「なんでそこまで知ってるのよ!」
「真白の周りにいる男は全部把握してる。普通だよ」
「普通じゃない!」
「独身で彼女は半年いないみたいだね」
「そこまで調べるな! 仁科さんに失礼だわ!」
怒って声を上げても、京志郎は悪びれる様子もなかった。
私は深く息を吐いてシートへ背中を預ける。
相変わらずだ。こんなことを平然とやっておきながら、それのどこがおかしいのか本人だけがまったく理解していない。