婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!
私はムッとしながら口を開く。
「でも、そうだね。仁科さんは、すごく普通の男性で、普通の恋愛ができそうに思った」
「……普通の恋愛?」
「そう。私がずっとしてみたかったやつ」
「仁科さんと? 真白は彼と恋愛したいの?」
「たとえばの話よ」
思わず口にすると、京志郎はそれきり黙り込んでしまい、なぜか私の腕を掴んでいた指からもゆっくり力が抜けていった。
どう考えたって、百人に聞けば百人が、婚約者の逃亡先を突き止めて職場にまで転職してくる変態より、仁科さんのような普通に優しくて爽やかな男性を選ぶだろう。
「京志郎より、絶対いいと思う」
「……そう」
返ってきた声は思ったよりずっと静かだった。
いつもとは違う静けさに、何を考えているのか読み取れない。