婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!

 やがてタクシーがアパートの前に止まり、私は料金を払おうとしたものの京志郎に先を越され、結局それにも腹を立てながら車を降りた。

「じゃあね」

 さっさと部屋へ帰ろうと背中を向けたのに、後ろでドアの閉まる音がして、振り返れば京志郎までタクシーから降りている。

「なによ」
「真白の言う普通の恋愛って何? さっき言ってただろ。普通の恋愛がしたいって」
「そんなの……」
「具体的に教えて」

 京志郎は珍しく笑っておらず、酔っている私とは対照的なほど真剣な顔でこちらを見ていた。
 今日一日で積もりに積もった苛立ちに酒の勢いまで加わった私は、その表情の意味を考えるより先に口を開いていた。

「京志郎みたいに、しつこくつきまとってこないことよ!」

 夜の住宅街に響きそうな声で、私は思いきりそう叫んだ。
 私は酔っていたのだろう。話す必要もないのに、つい続けている。
< 24 / 25 >

この作品をシェア

pagetop