婚約者の溺愛が重すぎて、普通の恋ができません!
やがてタクシーがアパートの前に止まり、私は料金を払おうとしたものの京志郎に先を越され、結局それにも腹を立てながら車を降りた。
「じゃあね」
さっさと部屋へ帰ろうと背中を向けたのに、後ろでドアの閉まる音がして、振り返れば京志郎までタクシーから降りている。
「なによ」
「真白の言う普通の恋愛って何? さっき言ってただろ。普通の恋愛がしたいって」
「そんなの……」
「具体的に教えて」
京志郎は珍しく笑っておらず、酔っている私とは対照的なほど真剣な顔でこちらを見ていた。
今日一日で積もりに積もった苛立ちに酒の勢いまで加わった私は、その表情の意味を考えるより先に口を開いていた。
「京志郎みたいに、しつこくつきまとってこないことよ!」
夜の住宅街に響きそうな声で、私は思いきりそう叫んだ。
私は酔っていたのだろう。話す必要もないのに、つい続けている。