海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
「幸せな恋愛とは、なんだ?」

真面目な顔をして、この人はいったい何を言っているんだろう。

「いや、あの失礼ですが、社長ってかなりモテますよね? その…恋愛経験も豊富なのでは?」

思わず尋ねる。だってこの容姿に社長という立場。モテないわけがない。女性社員からもキャーキャー騒がれている。時透社長は少し考えるように黙ってから、淡々と答えた。

「人並みに経験はある。だが、愛していたかと言われると…わからない。そもそも、そんな感情を持ったことがない」

「え?」

思わず口がぽかんと開いてしまう。こんなに素敵な絵を描く人の中に、恋愛感情というものが存在しないなんて。いや、そんなことってあるのだろうか。

「そもそも、いずれ結婚するにしても、お見合いだ。会社存続のためにな。親同士が、互いに利益になると判断した相手とすることになる」

そう言って、時透社長は一口コーヒーを飲む。

「は、はあ」

なんだか、ものすごく現実的だ。ここまで割り切っている人は初めて見た。

「だから、君の素直なその感性が知りたい」

カップをテーブルに置いた時透社長がまっすぐ私を見る。

「俺の描く絵を見て、君が何を感じたのか。それを教えてほしい」

真剣な眼差しだった。この人は、本気なんだ。仕事に対して、とても真面目で、妥協をしない。社長という立場に甘んじることなく、常に努力していることも、社員ならみんな知っている。不景気が続く中でも、会社の新しい柱になる商品を考え、アクアリウムコスメをシリーズ化したのも彼だった。そして、それが大ヒットした。まさか、その商品のデザインを手がけた「ルイさん」が、社長本人だったなんて。今でも、まだ信じられない。でも――。
そんな彼が今、私に求めている。技術でも、知識でもない。ただ、私が絵を見て感じたことを。
< 11 / 36 >

この作品をシェア

pagetop