海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
キッチンを借りて、冷蔵庫を開ける。食材は、思っていたよりもいろいろ揃っていた。何を食べるんだろう。言い出したのは私なのだから、ちゃんと考えないと。昨日はサラダだけだったと言っていたし、胃に優しいものがいいよね。せっかくなら、栄養のバランスも考えて――。そうして作ったのは、お稲荷さんにほうれん草の胡麻和え、ぶりの照り焼き、ひじきの和え物。それから、具材をたっぷり入れたお吸い物。我ながら、かなり健康的な献立になった。

「どうしよう。洋食のほうがよかったかな」

パスタとか、もっと簡単なもののほうが喜ばれたかもしれない。そんなことを考えていると――。

「すごいな」

「わっ!」

いつの間にか、すぐ後ろに時透社長が立っていた。驚いて振り返る。

「びっくりした」

「すまない」

「いえ、お口に合えばいいのですが」

時透社長はテーブルに並んだ料理をじっと見つめている。

「こんな家庭的なもの、久しぶりだよ」

「そうなんですか?」

「ああ。ありがとう、七海さん」

ふっと、優しそうに笑った。この人、こんなふうに笑うんだ。いつも眉間に皺を寄せて、難しい顔をしている印象が強いから。なんだか、少しだけ新鮮だった。

「じゃあ、どうぞ」

「ああ」

時透社長が箸を手に取る。私は緊張しながら、その様子を見守った。一口、ぶりの照り焼きを口に運ぶ。無言。もしかして、口に合わなかった?不安になっていると。

「美味しいな」

その一言に、ほっと胸を撫で下ろす。私も箸を手に取って、お吸い物を口にする。

「社長のお口に合ってよかったです」

嬉しくて、自然と頬が緩んだ。向かいに座る時透社長の食事をする姿を改めて見る。箸を持つ仕草も、背筋の伸びた姿勢も綺麗だ。育ちの良さが出ている。そして食事を終えると、二人で食器を片付ける。

「私、洗いますね」

「いや、俺もやる」

「じゃあ拭いてもらっていいですか?」

食器を洗い始めたそのとき。ふと、視線を感じた。じとっとした目で、時透社長がこちらを見ている。
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