海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
仕事終わり、私は二階のフロアへ向かった。いつものように、あのクラゲの絵を見るために。ルイさん――いや、時透社長のデザイン画も無事に完成した。彼も満足そうに笑っていた。そんなことを思いながら、私は今日も絵の前に立つ。

「やっぱり、ここか」

「社長?」

振り返ると、時透社長が立っていた。

「この絵を見て、どう思う?」

そう尋ねられて、私はもう一度、目の前の絵を見つめる。

「クラゲが、夜空を泳いでるみたいです」

何度見ても、不思議な絵だ。

「クラゲ座があったら、こんな感じなのかなって…前から思ってました」

そう言うと。隣から、ふっと楽しそうな笑い声が聞こえた。

「やっぱり、君には敵わないな」

「え?」

時透社長が絵を見上げながら、どこか嬉しそうに笑っている。

「夜空を見ていたら、星々がクラゲに見えたんだ」

「星が…?」

「ああ。それで描いた」

時透社長が絵を見つめる。

「これを見た人はみんな、水族館にいるクラゲだと思うのにな」

そう言って、また笑った。私は目の前の絵を見つめる。

「この絵って……」

「うん」

時透社長がこちらを見る。

「俺が描いた」

「……え?」

思わず目を見開く。

「この絵も社長が?」

「ああ」

ずっと、名前も作者もわからなかった。それなのに、私は毎日のようにここへ来ていた。

「素敵ですね」

そう言うと、時透社長は少しだけ目を細めた。

「いつも見てくれていただろ?」

「はい」

「だから、君のことは知っていた」

胸が小さく跳ねる。

「それに――気になっていた」

「え?」

「愛おしそうに、この絵を見つめる君の瞳が綺麗で印象に残っていたんだ」

静かな声に心臓が大きく鳴った。ずっと私を癒してくれていた絵。その絵を描いた人がずっと私を見ていたなんて。
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