海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
地下駐車場に鎮座していたのは、白いボディの大型SUVだった。車高が高く、堂々としたその姿は、まるで神殿のような威圧感を放っている。

「どうぞ」

開かれたドアの前で、思わず立ち尽くした。

「ありがとう」

エスコートが自然すぎる。ちょっと待って。これ、普通なの?恐る恐る乗り込んで、さらに固まった。……何これ。車、だよね?ふかふかのシートはソファみたいだし、木目と革で統一された空間は、高級ホテルのラウンジそのものだ。まるで走る個室。いや、個室どころじゃない。下手をしたら、私の部屋より快適かもしれない。

「どうしたの?」

「……いや、車の中とは思えない。すごい」

正直な感想だった。

「父の趣味でね」

海人は何でもないことのように答え、エンジンをかけた。

「そうだ。水族館は夜に行くから、昼間は普通にデートしようと思ってる」

「はい! お願いします」

「いい返事」

ふっと笑い、車を走らせる海人。ふと隣を見ると、ジャケットにタートルネックという姿が目に入った。……美しい。運転しているだけなのに絵になるって、どういうこと?

「それよりも、全部任せちゃってごめん」

「いいんだよ」

海人は前を向いたまま、さらりと言った。

「好きな人は、めちゃくちゃ甘やかしたくなるみたいだ」

「え?」

さらっと言わないで。心臓が追いつかない。もう、ドキドキさせられっぱなしだ。

二人で買い物を楽しんだあと、少し早めの夕食へ向かった。そして――。

「美月、和食好きかなと思って」

車を降りた海人が、私を見る。

「予約しといた」

「ありがとうございます」

案内された場所を見上げて、私は固まった。…え?見るからに高級そうなんだけど。敷地内には竹林が広がり、その奥には小さなししおどし。季節の花がさりげなく飾られていて、なんというか。

「おもむき…」

思わず小声で呟く。私、場違いじゃない?恐る恐る中へ入ると、落ち着いた店内を通り、個室へ案内された。

「こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

案内された席に正座する。なんとなく背筋が勝手に伸びる。周りをきょろきょろ見渡していると、仲居さんが丁寧に料理の説明をしてくれた。一品一品、まるで芸術品みたい。綺麗すぎて、どうやって食べればいいのかわからない。震える手で箸を持つ。待って。こういうところって、礼儀作法とかあるよね?
お箸の持ち方、大丈夫?魚が出てきたら?お椀は?え、これ…一口で食べるもの?頭の中に次々と疑問が浮かんでくる。目の前の海人は何の迷いもなく、綺麗な所作で箸を動かしている。
やっぱり完璧。
私だけ、さっきから箸を持ったまま固まっている。すると海人がこちらを見た。
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