海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
「美月」

「は、はい!」

突然名前を呼ばれて、背筋がぴんと伸びる。

「そんなに畏まらなくていいよ。個室なんだし。気にせず、美味しく食べてくれればいいから」

海人が優しく微笑む。

「わ、わかりました」

そう言われて、私は改めて料理に向き合った。まずはお刺身を一切れ。醤油を少しだけつけて、口へ運ぶ。

「ん!」

なにこれ。美味しい。口の中で魚の旨味がふわっと広がって、思わず頬が緩む。次に目に入った、つぶ貝の鰹出汁ジュレも一口。

「美味しい?」

海人が楽しそうにこちらを見る。

「はい。とっても」

そう答えると、海人は目を細めた。

「ならよかった。その顔が見られるだけで、俺にはご馳走だね」

また、そういうことをさらっと言う。

「それだと、お腹は満たされませんよ」

「ん?」

「海人はもっとちゃんと食べないと」

「俺?」

「だって、夕飯をサラダだけで済ませることもあるじゃないですか」

忙しいのはわかっている。それでも、食事を疎かにしてほしくない。

「ちゃんと食べてくださいね」

そう言うと、海人は少しだけ目を丸くした。

「でも、美月がいるだろ?」

「私?」

「心配して、夕飯を作ってくれる」

「そりゃあ作りますよ」

思わず笑ってしまう。

「住まわせてもらってるし。私もお腹空くし。それに……」

箸を置いて、海人を見る。

「一緒に食べたほうが美味しいでしょ?」

その言葉に、海人が一瞬だけ黙った。そして、少し驚いたように目を丸くしたあと――ふっと柔らかく笑う。

「そうだね」

その表情が、いつもより少しだけ嬉しそうに見えた。

「じゃあ、俺が食事を疎かにしてたら、ちゃんと怒ってね」

「もちろんです」

海人が嬉しそうに笑う。その顔を見て、私も自然と笑っていた。
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