海色の恋〜冷徹社長の甘い愛に染められて〜
夜の水族館は、昼間とは少し違っていた。照明が落とされた館内には、水槽の光だけが静かに浮かんでいる。青い光に照らされた魚たちが、ゆっくりと水の中を泳いでいた。

「綺麗ですね」

思わず足を止める。

「そうだな」

隣に立つ海人も水槽を見上げている。その手をそっと握る。海人の指が絡んできて、二人でゆっくりと歩き出した。

「もう、どういうものを描くか決めてるんですか?」

ナイトアクアリウムのポスターデザインについて尋ねる。

「何となくはね」

「そういえば…」

私はふと、思い出す。

「海人の描くものって、海の生き物ばっかりですよね。何かこだわりがあるんですか?」

クラゲの絵もそうだ。アクアリウムコスメはコンセプト的に海の生き物がモチーフになるのもわかる。でも、それだけじゃない。家に置かれている箸置きも、コップも。海人が趣味で描いたという絵も。気づけば、いつも海の生き物だった。

「単純に好きなんだよ。海の生き物が」

海人は少し笑った。

「母の実家が海沿いにあってね。幼い頃は、よく水族館にも連れて行ってもらったんだ」

「そうだったんですね」

「だからかな。海の生き物を見てると、自然と癒されるんだよ」

そう言って、水槽の中を泳ぐ魚に目を向ける。いつもより少しだけ柔らかな横顔。なんだか、いいな。海人が海の生き物を描く理由を知れたことが嬉しかった。

「あ」

ふと、水槽の中にいる魚に目が留まる。

「海人って、この魚に似てます」

「俺が?」

「エンゼルフィッシュかな?」

指差した先を、海人も見る。白と黒と黄色の美しい縞模様。額から角のように伸びた細長い口先。そして、背中から一本だけすっと長く伸びた白い背びれ。水の中を優雅に泳ぐ姿は、どこかスマートだ。
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