加納欄の冤罪シリーズ33シーズン4
「触られたのは、お尻だけですか?」

あたしが聞くと、小山内さんは少し黙った。

「……身体も、後ろから押しつけられて」

「どのくらいの間?」

「分かりません……すごく長く感じて……」

「大丈夫です。ゆっくりでいいですよ」

小山内さんは小さく頷いた。

「触られ始めたのは、電車が動いてからですか?」

「はい」

「何回くらい?」

「何度も……離れたり、また触ってきたり……」

あたしは手帳に書き留めた。

「相手の顔や服装は見ました?」

「顔は……見てません」

「手の特徴は? 時計とか、指輪とか」

「分かりません……」

「じゃあ、腕を掴んだ時は?」

「また触られて……もう我慢できなくて」

小山内さんの声が震えた。

「振り向かないで、そのまま後ろの腕を掴みました」

つまり、その腕が吉井さんだった。

< 9 / 52 >

この作品をシェア

pagetop