アネモネの花
“なに?”

――と、聞いたものの紘人からの言葉は無く、その変わりに、独り言のようなものが聞こえてきた。


きっと、次の言葉を選んでるんだと思った。

だから、私は特に急かすこともせず、黙って紘人の次の言葉を待った。



その内容は私にはよく聞こえなかったけど、すぐ後に解決したような声が聞こえ、

紘人は私との会話を、今思い出したかのような言葉を発しながら答えた。




『あ、ごめんごめん。
……さなと知り合うちょっと前だったかな?俺ね、そっちでやったライブ行ったことあるよ。誰のだったかなー…忘れたけど。さなと知り合った後だったら良かったのになぁ』

「知り合う前とかって、かなり前じゃん。で?なんで、知り合った後なら良かったの?」


紘人と知り合った時っていつだっけ…?

あんまり良い時期じゃなかったから、はっきりと覚えてないんだよなぁ。


そう、頭のどこかで思いつつも、

私は電話を持ってない方の手の指で逆算しながら、紘人の答えを待った。
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