閻魔様の恋カルテ~冷徹ドクターの秘密は恋のはじまり~
6 意外な一面
ピピピ……
「……すまない」
「あ、いえ、どうぞ、出てください」
永緒先生の院内PHSが鳴った。なんてタイミング!
「もしもし」と応対している永緒先生を横目に、立ち聞きも良くないと場所を移動して作業の続きにかかった。
音を立てないように、シュレッダーは後回しだ。
マスキングテープを貼り終えたものから順番にスキャナにかけていると、永緒先生の横顔が見えた。
院内PHSがすっぽり隠れてしまうほどの、大きな手。
永緒先生は大柄な体格ではないけれど、翻る白衣から時折ちらりと覗くシャツからは、引き締まった体つきがうかがえる。
ジムに行って鍛えていたりして。
あんなに忙しそうなのに、時間を捻出して自己研鑽も怠らないだなんて、社会人の鑑だ。
ふと、永緒先生に掴まれた自分の二の腕にさりげなく触れる。
……うん。これ以上考えるのは精神衛生上よくない。
カチッと硬いものが触れる音がして顔を上げる。通話を終えた永緒先生が院内PHSをポケットにしまうところだった。
ストラップが揺れて、チャームがPHS本体に当たったようだ。
そうだ。さっき気がついたこと。
どこかで見覚えのある、あの茶色い……。
「日下部さん、話が途中になってすまない。それで用件としては――」
「あっ!」
「え?」
虚をつかれた永緒先生が目を見開く。いつもより幼い表情に見えた。
ううん、そんなことより、それは。
「永緒先生、そのカピバラ!」
ばっと自分の胸ポケットに差してあったボールペンを取り出して、クリップのチャームを見せた。
「私も持ってるんです! ほら!」
やっぱりそうだ。私の目は節穴ではなかった!
カピバラのイメージを覆すアグレッシブなポーズに定評のある、ゆるキャラ、かぴのすけ。
ぽってりしたフォルムなのに一生懸命暴れん坊を気取っている、背伸びしたキャラ造形が人気のひとつだ。
かく言う私もファンで、コンビニくじを見かけるとつい参加してしまう。
私のボールペンについているのは普通の威嚇ポーズなので、永緒先生の院内PHSについている、温泉で犬かきに勤しむかぴのすけはレアものだ。
「可愛いですよね、かぴのすけ。永緒先生もお好きなんですか?」
「あ、ああ……そう、だな」
自分でも圧が強かったかな、と自覚はあったものの、永緒先生はチャームを見下ろしてふっと口元を緩めた。
「手に取った時は少々気恥ずかしくもあったが……今となっては、悪くない」
……うわ、意外だ。
閻魔様なんて呼ばれる永緒先生が、ゆるキャラに微笑んでいるなんて。
こんなギャップ、院内に知れ渡ったら大変なことに――。
「……すまない」
「あ、いえ、どうぞ、出てください」
永緒先生の院内PHSが鳴った。なんてタイミング!
「もしもし」と応対している永緒先生を横目に、立ち聞きも良くないと場所を移動して作業の続きにかかった。
音を立てないように、シュレッダーは後回しだ。
マスキングテープを貼り終えたものから順番にスキャナにかけていると、永緒先生の横顔が見えた。
院内PHSがすっぽり隠れてしまうほどの、大きな手。
永緒先生は大柄な体格ではないけれど、翻る白衣から時折ちらりと覗くシャツからは、引き締まった体つきがうかがえる。
ジムに行って鍛えていたりして。
あんなに忙しそうなのに、時間を捻出して自己研鑽も怠らないだなんて、社会人の鑑だ。
ふと、永緒先生に掴まれた自分の二の腕にさりげなく触れる。
……うん。これ以上考えるのは精神衛生上よくない。
カチッと硬いものが触れる音がして顔を上げる。通話を終えた永緒先生が院内PHSをポケットにしまうところだった。
ストラップが揺れて、チャームがPHS本体に当たったようだ。
そうだ。さっき気がついたこと。
どこかで見覚えのある、あの茶色い……。
「日下部さん、話が途中になってすまない。それで用件としては――」
「あっ!」
「え?」
虚をつかれた永緒先生が目を見開く。いつもより幼い表情に見えた。
ううん、そんなことより、それは。
「永緒先生、そのカピバラ!」
ばっと自分の胸ポケットに差してあったボールペンを取り出して、クリップのチャームを見せた。
「私も持ってるんです! ほら!」
やっぱりそうだ。私の目は節穴ではなかった!
カピバラのイメージを覆すアグレッシブなポーズに定評のある、ゆるキャラ、かぴのすけ。
ぽってりしたフォルムなのに一生懸命暴れん坊を気取っている、背伸びしたキャラ造形が人気のひとつだ。
かく言う私もファンで、コンビニくじを見かけるとつい参加してしまう。
私のボールペンについているのは普通の威嚇ポーズなので、永緒先生の院内PHSについている、温泉で犬かきに勤しむかぴのすけはレアものだ。
「可愛いですよね、かぴのすけ。永緒先生もお好きなんですか?」
「あ、ああ……そう、だな」
自分でも圧が強かったかな、と自覚はあったものの、永緒先生はチャームを見下ろしてふっと口元を緩めた。
「手に取った時は少々気恥ずかしくもあったが……今となっては、悪くない」
……うわ、意外だ。
閻魔様なんて呼ばれる永緒先生が、ゆるキャラに微笑んでいるなんて。
こんなギャップ、院内に知れ渡ったら大変なことに――。