その青は還る 完結
 次の日、豆田は四つ折りにした紙を差し出してきた。広げて見れば、明らかに機械が考えた文面だった。思わず眉を顰めたが、どうやら悪びれる様子もないようで、俺はただやり直しを伝えた。

 翌日。彼は機械が考えたものに、誰かの言葉を借りて上書きしていた。その翌日には、機械のことなど忘れたように、誰かの言葉を乱雑に並べていた。そうなるのは仕方ないが、数日経っても彼の様子に変化はなかった。

 ただ、彼なりに努力してるのは分かっていた。いつものように彼は隣に座ってから、黒服にキャストをつけることを断った。おそらく、俺を真似ているらしいが、どこかでからかってやろうと思った。

「佐伯さんって、彼女いるんすか」

「なんだ、急に」

 想定内の質問だった。そこで、一つ仮説を立てた。

「だって、こういう店、彼女的にはよろしくないじゃん」

「まぁ、そうだろうな……」

 俺が多くを語らなくても、相手は勝手に想像してくれる。

「あ、喧嘩中とかっすか。てか、別れたとか?」

「そういうのはいない」

 酒を飲まずに、煙草を吸えば、意味深に捉えるはずだ。

「え、佐伯さんって……。俺、狙われてる?」

「アホか……」

 思い通りに引っかかって、軽く口角が上がっていた。すると、彼はおもむろに紙を出した。

「これ、考えました。ちゃんと自分で」

 すぐに視線で追いながら、俺は彼にそのまま伝えた。

「悪くない。ただ、誤字脱字が多い」

 歌詞の冒頭を見た時、脳裏に五線譜が浮かんでいた。そこで、財布を手に取り、札を多めにテーブルの上に置いた。少し駆け足で店を出て、コインパーキングに向かった。

 車に乗り込み、自宅に向かっていく。その間に何度も浮かんで、それを頭の中で拾い続けた。自宅に駆け込み、部屋に入ると、新しい五線譜を取り出した。すぐに万年筆を手にして、思い出しながら、書き込んでいった。

 それは時間が過ぎても、日を跨いでも続いた。煙草を吸いながら考えて、ベッドに寝転んでも音を拾っていた。いつ寝たのかも分からない状態で、ようやく埋まった五線譜を手に、眺めていた。

 傍らに置いた携帯が震えて、表示を見ると、以前に掛けた昔の知人の名前だった。

「今更かよ」と俺は不機嫌な声を出した。

「悪いな。少し遊んでた」と知人は相変わらず余裕を崩さず、俺のことを窺ってるようだった。

「取り敢えず、会って話がしたい」俺はそう伝えた。すると、「了解。午後三時だ」と知人は言って、電話を切った。

 俺はシャワーを浴びてから、適当な服を着て、部屋を出た。車に乗り込んで銀行へ行き、金を下ろしてから、知人の元へ向かっていった。
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