名探偵は活躍しない
「おはよう、まりあ。同じクラスだね」

 見覚えのある顔が私に近寄って来る。

 桜の花びらが、ひらひらと舞う春。

 昇降口付近に張り出されたクラス表を見ていると。

 ばしっと肩をたたかれた。

 深い緑色の大きな目に栗色のショートヘア。

 すらりとしたモデル体型に。

 本人から発する黄金のオーラ。

「おはよ」

「うーん。うちのクラスに学年トップと2番がそろうのか。くぅー。面白くなりそ!」

 学年トップ…という言葉に「ああ…」とだけ声を漏らすと。

 人混みの中から不安げな表情を浮かべた椿ちゃんが、こっちにやって来た。

「桜子ー。急にいなくならないでよ!」

「ごめんごめん。いとこちゃんに挨拶してただけよ。あたしと椿。リューイチ君にまりあなんて。幼なじみが集結って感じよね?」

 がははは…と桜子ちゃんを見ているうちに。

 うちの父を連想させるのは、やはり血が繋がっているからだろうか。

「椿ちゃん。りゅっ…松田君は?」

 急に私が話しかけたものだから、椿ちゃんは軽く「ひっ」と悲鳴を漏らした。

「あ、ごめんなさい。馴れ馴れしくて。えっと…大江さん?」

 小さい頃は、椿ちゃんと呼んでいたけど。

 嫌だったのかもしれない。

「うーん。違うの、ビックリして。龍一は捜査で休みだよ」

「あいつ、たまにしか学校来ないんだよー。それでよく進学出来たよねえ」

 呆れたように桜子ちゃんが言った。
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