【秘密の溺愛シリーズ】 紳士な社長の秘密を知ったら、独占欲強火の愛で娶られました

プロローグ


「遅くなっちゃった」

 急ぎ足でマンションのゲートをくぐり、エレベーターに乗り込む。最上階で降りると、ふたつしかないドアの右側に立った。【Takatoo】と書かれたプレートの下の小さなモニターに顔を映すと、カシャンという音と共に、ドアが解錠された。

 去年販売開始と共に売り切れたという伝説を持つこの高層レジデンスは、玄関キーに顔認証システムが使われている。一階のエントランスも玄関も完全に〝顔パス〟という状態に、住みはじめてから一週間たった今もまだ慣れない。

 中に入ると広々とした玄関がある。つやつやした大理石に傷をつけないよう細心の注意を払いながら靴を脱いだ。

「お帰り」

 声をかけられ振り向いたら、細身のスラリとした長身の男性が現れた。

「社長! 帰ってらっしゃったんですね」

 出先から直帰するとは聞いていたけれど、いつも彼の帰りは遅いので、私より先に帰宅しているとは思わなかった。早く着替えて夕飯の支度をしなければと、急いで部屋へ行こうと足を踏み出したところで、たくましい腕が腰に巻きついた。あっと思った次の瞬間、グイっと引き寄せられる。

 至近距離にあるきれいな顔。くっきりとした並行二重のアーモンドアイを細め、口の端を持ち上げる。微笑みの形をとっているが、昼間見た紳士然とした微笑みとはとはまったく別ものだ。
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