人は見た目に騙される

 佑真を見て怯える夏菜をなるべく近付けないようにして桜都は歩く。
 佑真はそれを見て何か言いたそうな素振りを見せていたが、お金を借りられる嬉しさからか、それほど絡んで来ない。
 今は完全にターゲットが夏菜から桜都に変わっていた。

 そして桜都に案内された場所は古い雑居ビルだった。看板はなく、入口に黒いスーツの男たちが立っている。
 不安になった夏菜が周囲を見回した。

 「……雨宮さん」
 「はい」
 「ここ……何?」
 「お金を貸してくれる人がいる場所です」
 「え?」

 桜都はそのまま歩いていく。夏菜も追いかけると佑真もついてくる。

 「おい、雨宮さん」
 「何ですか」
 「本当にここで金を貸してくれるのか?…普通の場所じゃないよな?お前んちの実家は?」
 「知りません」
 「知りませんって……」

 佑真の声が少し上ずる。それでも桜都は足を止めない。建物の奥へ進むほど、空気が変わっていった。
 黒いスーツの男たちが壁際に立っている。
 
 誰も笑わないし、誰も雑談しない。そんな光景に夏菜が小さく息を呑む。
 その時、桜都が通り過ぎると男たちが一斉に頭を下げた。



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