人は見た目に騙される

神白秀人という男性


 桜都はそのまま奥へ進む。夏菜もその後をついていく。
 佑真も男たちに囲まれながら歩くしかなかった。
 廊下の両側に男たちが立っている。誰も話さない。ただ桜都が通る道を開ける。
 
 そして一番奥。そこに男がいた。
 神白秀人(かみしろしゅうと)、この組織の頂点に立つ男。誰もが「ボス」と呼ぶ。

 黒いスーツに無駄のない身のこなし。整った顔立ちは三十代半ばほどに見える。
 その男が振り向いた瞬間、廊下にいた男たちの空気が変わった。
 
 誰も声を出さない。
 誰も目を合わせない。
 それだけで分かる。この男がこの場所で一番上にいる。

 彼の一言で、ここにいる全員が動く。
 この組織の金の流れも、人間関係も外との交渉もすべて、この男の判断で決まる。
 表向きには存在しない。だが裏の世界では名前を知らない者の方が少ない。
 金を貸す。
 金を回収する。
 他人の借金を引き受ける。
 揉め事を処理する。
 必要とあれば表に出る前に問題を消す。
 この世界では彼に逆らうことそのものが大きなリスクだった。
 怒鳴ることもない。
 大声を出す必要もない。
 名前を一つ呼ぶだけで、人間は自分の立場を思い出す。
 
 そんな男だった。
 

 
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