人は見た目に騙される
だが、その男が桜音を見る目だけは違った。
「遅かったな」
「仕事がありましたから」
「そうか」
声がほんの少しだけ柔らかい。夏菜は気づいた。
この男は桜都にだけ明らかに接し方が違う。桜都が近づくと、秀人は自然に椅子を引いた。
「座れ」
「大丈夫です」
「俺が座れと言ってる」
「……分かりました」
桜都が座ると秀人は満足そうに目を細めた。夏菜は目の前の光景を呆然と見ていた。
「……雨宮さん」
桜音は夏菜を見る。
「はい」
「この人……」
「大丈夫です」
それ以上は言わない。 夏菜は何も聞けなかった。
一方、佑真はさらに恐ろしくなった。自分が知っている男たちとは違う。この男は桜音を特別扱いしている。
それも――
明らかに好意を持っている。けれど桜音本人はまるで気づいていないようだった。
「こいつか」
秀人が佑真を見る。
「はい、夏菜先輩に暴力を振るった男です。私もお金を要求されました」
秀人の目から温度が消えた。
「そうか」
佑真は震えた。秀人はそんな佑真を射貫くように見た。
「お前、いくら必要なんだ?」
「……え?」
「三十万と言ったそうだな」
「は、はい……」
「それだけか?」
佑真は一瞬迷った。恐怖と欲求の天秤が揺れる。少しばかりの理性も働くが、ここで金額を大きく言えばもっと借りられる。そう考えてしまう。
「……五十万」
秀人は黙った。
「本当に必要なのはいくらだ?」
佑真は答えられない。秀人が続ける。
「うちは慈善事業じゃない」
低い声だった。
「金を貸すなら、条件がある」
「……条件?」
「十日で五割」
佑真が目を見開く。
「五割……?」
「十日で返せなければ、その分も含めて話は続く」
秀人は淡々と言った。
「それでも借りたいか?」
佑真は喉を鳴らした。高い…
普通なら躊躇する。だが、佑真はすでに追い詰められていた。
借金が山のように膨れ上がっていた。