人は見た目に騙される

 その後、秀人は桜音のために車を用意した。

 「送る」
 「必要ありません」
 「俺が必要だと思ってる」
 「……そうですか」

 桜音が車に乗る。秀人は運転手に言った。

 「今日は寄り道する」
 「どこへ?」
 「コンビニ」

 桜音が言った。

 「なら鮭のおにぎりを買います」

 秀人は小さく息を吐く。

 「分かってる」
 「……?」
 「お前が鮭しか食べないのは知ってる」

 桜音は黙った。
 そんなことまで覚えているとは思わなかった。秀人は桜音を見る。

 「何だ?」
 「別に」
 「そうか」

 車内に静かな時間が流れる。秀人は桜音の横顔を見る。
 その視線には明らかな好意があった。
 だが、桜音は気づかない。
 あるいは気づいていて、気づかないふりをしているのかもしれなかった。




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