人は見た目に騙される
数日後、夏菜は会社で桜都に声をかけた。
「ねえ、雨宮さん」
「はい」
「佑真……あれから全然連絡してこなくなった」
「そうですか」
「会社にも行ってないみたい。えっと…、本当に漁船に乗せられちゃったの?」
「さあ?完全に切れたみたいでよかったじゃないですか」
「……うん」
夏菜は困惑し、少し迷ってから聞いた。
「ねえ、雨宮さんって……何者なの?」
桜都は夏菜を見る。
「この前の人達もそうだけど、みんな雨宮さんに頭下げてたよね?」
「お嬢って呼んでたし……」
夏菜は続けた。
「あの神白さんって人も怖かったけど……雨宮さんにはすごく優しかった」
桜都は少し考えた。そして答えた。
「昔からの知り合いです」
「本当に?」
「それ以上必要ですか?」
夏菜は苦笑した。
「……やっぱり雨宮さんらしい。でもありがとう」
「先輩には借りがありましたから」
「借りって…?」
「残業分です。何度か手伝って頂きました」
それを聞いた夏菜は驚いた。
「いや、あれは私が勝手にしてたことで…」
「借りは借りです。借りたものは返します」
当たり前のように言う桜都に夏菜は拍子抜けをする。
「雨宮さん…」
呆れた…
ここまでだとは思っていなかった。
でも、夏菜は笑った。
「けど、これからもお昼は一緒に食べてくれるよね?」
桜都の動きが止まり、数秒の間があった。珍しく視線が揺らいだ気がしたが、すぐにとても聞き取りにくい声がした。
「……はい」
夏菜にはしっかりと聞こえていた。
「よかった。これからもよろしくね」
それだけ聞ければ満足だった。
夏菜は嬉しそうに笑う。桜都は笑わない。が、それでよかった。
この時初めて二人の間に同僚以上の温かなのもが生まれたような気がした。