人は見た目に騙される

 「ありがとう雨宮さん」
 「いいえ」

 佑真のそんな考えなど知らず、桜都はそのまま夏菜を自宅へと送り届けた。アパートではなく一駅離れた夏菜の実家の方へ。
 
 そしてこの件以降暫くは静かだった。何も言ってこない夏菜に、桜都もまた何も聞かなかった。

 だが数日後、桜都が会社を出ると、少し離れた場所に佑真が立っていた。何故か桜都を待っていた。

 「あ、いたいた。雨宮さんだっけ?」
 「何ですか」
 「この前は悪かった」
 「そうですか。先輩なら帰りましたけど」
 「いや、今日はあんたにちょっと相談があるんだけど」
 「なんですか?」
 「あんたに折り入って頼みたいことが」
 「だから何ですか?」
 「お金貸してくれない?」
 
 桜都は黙って佑真を見る。
 
 「一万円でいい。そのかわり夏菜にはもう金を請求しない。酷いこともしないと約束する」
 
 その言葉を無表情で聞いている。
 
 「だからさぁ」
 「本当ですか?」
 「本当、本当! これで最後にする」

 以前とは違い、物分かりのいい態度を向けてくる佑真に桜都は一呼吸した。
 
 「何に使うんですか」
 「生活費だよ」
 
 嘘だろう。
 桜都には分かった。それでも脳裏にある考えが浮かぶ。
 
 「三万円なら貸せます」
 
 そう言うと、予定より高い金額に佑真の目が変わった。

 「マジ?」
 「ただし、今後先輩にはお金の無心はしない。あと借用書も書いてください」
 「……そんなのいらないだろ」
 「なら貸しません」

 佑真はしばらく桜都を見た。そして笑った。

 「分かったよ」

 ちゃっかりしてんな。
 この時、佑真の中で確信が生まれた。この女、やっぱり金を持っている。
 そして夏菜をだしにすればあっさり金を出すと言ってくる。
 思いどおりの展開に思わずにやけそうになる。

 なら…
 とことんまで搾り取ってやる。

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