憧憬少女
「ユキちゃん、おはようございます!今日もスタートの18時からラストまで、本指名様のご予約で埋まっていますよ〜!満枠、ありがとうございます!」

出勤すると、インカムを付けた店長が弾んだ声で私を出迎えてくれた。

この業界での挨拶は、昼夜問わず『おはよう』で始まる。

店舗型ヘルスの営業時間は、朝6時から夜0時まで。

「ありがとうございます。今日もよろしくお願いします」

軽く会釈をしてから、割り当てられたプレイルームへ向かう。

その途中の狭い廊下で、すれ違いざまに思い切り肩をぶつけられて、よろけてしまった。

思わず相手の顔を見る。

No. 1のミオさんだ。

ミオさんは、顔をフイッと背けて去って行った。

あからさまにわざとぶつかってきたミオさんから、謝罪は期待しなかった。

気に食わないことがあるなら、言ってくれればいいのにな。

言葉なく向けられた敵意を、くだらないと思った。

ーーーーー

4畳半ほどのプレイルーム。

シングルサイズのマットレス、大人2人入るのがやっとの狭さのシャワー室。

簡易的なサイドテーブルの上には、イソジン、ローション、タイマーが用意されてある。

私服を脱いでカバンと一緒にカゴに入れる。
カゴには大きめのタオルを掛けて、サイドテーブルの下へ置いた。

そして、店のコンセプトである、ベビードールの衣装に着替える。

内勤が用意したベビードール。今日は薄ピンク色だ。

『君は、絶対に人気嬢になるよ!僕が保証する。業界未経験で擦れていないし、話し方も男ウケする。何より、顔が良い。美人だけど、ウブな可愛さもある。大型新人だ!源氏名は…そうだ、肌が雪のように白いから、ユキちゃんにしよう!』

面接を担当してくれた、店長から言われた言葉。

3ヶ月前に未経験で飛び込んだ風俗業界で、私は『プリティドール』の『ユキ』として、店のNo.2になっていた。
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