甘いヒーローの独り占め

16話

「わ、わ…!智くんダメ!私はしたない格好してる!」


Tシャツ一枚を着た服がワンピースとなっている桜子から、目を伏せつつ顔を逸らした。


「ズ、ズボンが大きくて…!履いたけど脱げちゃうから…その…ごめんね…?」

「………」


他の服を持って目線だけで見上げてくる桜子と、後ろのベッドを見ると、智也は深くため息をついた。


「…他の男の前でするなよ…」

「え!?智くんだけだよ!」

「………とにかく、服をもらう。すぐ洗って乾かすから、ソファーに座って待ってろ」

「うん…」


桜子から服を受け取った智也は、すぐに洗面所へ行き、洗濯機に服・洗剤・柔軟剤を入れてスイッチを押す。
洗濯機がゴォン…と音を立てて動き出すと、額に手を当てて目を閉じた。

脳裏に焼き付いたように、桜子のはだけた胸元と太ももと、後ろにあったベッドが過る。


「…~……勘弁してくれ…」


振動する洗濯機の音に、智也の小さな呟きがかき消された。


ソファーに座る桜子は、自分の今の恰好が落ち着かず、ソワソワしてしまった。


(智くん引いてないかな…こんな格好になるならそのまま帰ればよかった…!?)


両手で顔を覆っていると、智也が戻って来る音に体が少し跳ねて、ぎこちない座り方で待った。
しかし、一向にやって来ない智也を不思議に思い、ソファーから顔をのぞかせる。


「智くん…?」

「…桜子。エクレア、食べたらどうだ?」

「い、今!?でも智くんが食べるって…」

「俺は甘いのは苦手だ」

「え~…じゃ、じゃあ…いただきます…」


立ち上がった桜子は、恥ずかしそうに智也の前を横切って冷蔵庫へ向かった。
嗅ぎ慣れた匂いが、智也の鼻をくすぐった。
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