姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

「……なに? なんでここに……」
 睦美がようやく声を発した。
 だがまだ何が起きたか分からないという顔だった。

 私はたっぷりと言った。
「アオくんは来ないよ。私が彼の代わりに来たから」

 これは嘘じゃない。
 このぐらいなら、別室で見ている碧が不快になることはないはずだ。


「は……? あんた、いったい」
 睦美がようやく、私の前でだけ発するぞんざいな言葉遣いになった。

「まさかアオくんに会ったの?」
「……」
「どういうことか説明しなさいよ」
 睦美がヒールを鳴らして寄ってきた。

「なんでアオくんと私がここで会うこと知ってんのよ」
 睦美はぎらついた目で迫ってきた。
「あんた、耳ないの?」
「私は……伝言、伝えに来ただけ」
 私は縮こまって俯く。
 ……まだだ。まだ、睦美に支配されているように見せなければ

「アオくんに余計なこと言ってないでしょうね」
「……言って、ないよ」
 目の端で、睦美がほっとしたことが分かった。
 心配が晴れたからか、睦美は私の身なりに目を光らせた。胸倉を掴まれる。
「っ」
 胸元に抱えたサコッシュを守りながら睦美にされるがままになる。

「ねえ、なんなの、この服。これもっ」
 と言って、乱暴に私の耳からイヤリングをもぎ取って床に投げ捨てた。

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