姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~
「最初はあの子をむーちゃんだと思い込んだ。呼びかけたらすぐ振り向いたし、俺の目のことも、知ってたし」
「そっか……」
そこまで合っていたら、誰だって間違えるだろう。
問題は、睦美が私のふりをして碧と会話を続けたという事実の方だ。
「あの子だろ? 俺たちの手紙むーちゃんに渡さなかったのって」
「……」
返答に困りながら小さく、たぶん、と伝えた。
「それに、むーちゃんにあんなこと。俺は絶対許さないよ」
「アオくん」
胸が震えた。この言葉をどれほど聞きたかったか。碧に、私の味方になってほしいと願ったか。
「本当は、むーちゃんのお母さんの実家へ行ったとき打ち明けるべきだった」
私は首を横に振った。
あの時は私が勝手に誤解したのだ。
ふたりきりになれば男の子はみんな睦美に恋をした――その先入観があったから。
それに……
「ねえ、アオくん」
「なに?」
何でも聞いて、とでも言いたげな真剣な顔つきが向かってきて、私は目を泳がせる。
「……アパート――、アオくんのアパートで、私が先に部屋にいること知ってた?」
「うん」
!
やっぱり……
「それで、睦美の――嘘を、私に見せようと……?」
碧が頷く。
「れいちゃんが、『自分の胸に大きな傷ができて、親がお医者さんなら相談するよね』って言葉にしてくれてさ」
ああ……、
いろいろと腑に落ちて、私は静かに納得した。
「俺も自分の病気を治すために頑張った。治そうともしないのは不自然だと思った。だから『確かめよう』って」
“加害者”だった私は考えることを放棄してしまったけど、麗に言われて初めて冷静に判断できたことがいくつもあった。
「そうだったんだね……」
ふたりの機転がなければ、私は今も自分の境遇をあきらめていただろう。
「でも」
碧が肩を落とした。
「むーちゃんが、ここまでしたのに……俺、大失敗した、ごめん」
「失敗?」
「実は、俺が同級生たち連れて部屋に乗り込む段取りだったんだ」
「あ」
水面下ではそんなことまで麗と打ち合わせてくれたのかと、胸が熱くなった。