姉に初恋を奪われた私は、もう黙らない ~Silent Summer~

「最初はなんとか我慢した……けど、二度目は冷静でいられなかった」
「……」
 咄嗟に自分の頬を触ってしまった。
 あんなぶたれ方、私だって想像していなかった。
 それだけ睦美は従順な私に慣れていたのだろうし、なんとしても私の自我を折って、元の立場に戻そうとしたのだろう。

「でもみんな、動画は見てたんでしょう?」
「もちろんだよ。言葉を失ってたよ」
「じゃあ全然、それでいいよ!」

 睦美のことだから、『フェイク動画だ』と言い逃れるかもしれない――そう思ったから、実際に睦美の姿を見せたかった。けれど、“あの場にいた碧が『私たちの動画』の中に入ってきた”。それがなによりの証拠になったはずだ。

 ……それに、
 アオくんは、私が睦美に叩かれるのを見ていられなくて、助けに来てくれたんでしょう?


「――あ、光里ちゃんからメール入ってる」
 と、碧はスマホに手を伸ばした。
 私もつられてサコッシュからスマホを出す。
 開くと麗からメッセージが入っていた。


麗:アオくんと一緒だよね!
これまでの誤解の分、
ふたりでゆっくり喋ってよね😊

 私はすぐに、ありがとうと返信する。
 顔を上げると碧も文字を打ち込んでいた。

「なんて?」
 思わず、聞いた。
「俺が急に画面に現れたから光里ちゃん驚いたらしい」
 すぐに返信がきたようだ。
「あれから、光里ちゃんたちも隣の部屋に合流したって」
 そうなんだね、と碧のスマホを覗き込んだ。
 一緒に読む。


光里:碧君の彼女がむーちゃんの妹って、
びっくりだった
けどいろいろつながったよ 
 
光里:かわいそうだったね
私も泣いちゃった😢
でもこれからはみんな味方だよ!

光里:誰もむーちゃんかばってなかったよ
って言うか胸の傷ってなに?
そんなのないって、男どもが暴露してたけど。
週明け、荒れるよ~
   

「……」 
 とうとう、睦美の本当の姿をみんなが知った――
 その実感がじわじわと湧いてきた。

 碧を見る。
 碧も私を見た。
 その目が優しく、力強く、私に微笑みかけてくれた。

 ……アオくん、
 睦美から取り返したいと願ってきたけど、
 最初から取られてなんかなかったんだね


「……よく頑張ったね」
 碧の手のひらが私の頭の上に優しく降ってきた。

 いろんな想いで胸が詰まって、泣きそうになった。


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